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齋藤隆夫にみる真の政治家(9)~粛軍演説~

5.15事件においては、軍人が一国の総理大臣を銃殺したわけで、その罪の重大であることは言うまでもない。海軍刑法によれば、叛乱罪は死刑一点張りで、選択刑は許されていない。よって、死刑の要求が下った。ところが、その判決に反対運動が起こり、軍の上層部はこれを抑止せず、山本検察官の身に危険が迫ったため、多数の憲兵が彼を保護する、家族は遠方に避難…このような状態で、裁判の独立が維持できるはずがない。裁判の結果は、死刑の要求は13年と15年の禁固となり、軽いのは1,2年、しかも執行猶予つきとなった。ところが、同じ事件に関係した民間側被告の主犯は、無期懲役に処せられている。ある発電所に爆弾を投じたけれども未発に終わり、何の被害も出さなかった、それなのに、この極刑である。民間人であり、普通裁判所に属する者だから。一方では、実際に犬養首相の殺害に手を下したにもかかわらず、その人が軍人であり、軍事裁判所に属したため、はるかに軽い刑ですんでいる。人と場所によって、ここまで差別が生れる。天皇の御名において行われる裁判は、徹頭徹尾独立であり神聖であり、公平でなければならない。これで国家の裁判権が遺憾なく発揮されたということができるか。齋藤は、そのように軍を質し、5.15事件の主体的構造を解明することによって、2.26事件との連続性に強烈な光を当てている。 (つづく)

by mako-oma | 2017-05-30 21:20 | 齋藤隆夫 | Trackback | Comments(0)  

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