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齋藤隆夫にみる真の政治家(5)~粛軍演説~

広田弘毅首相がその声明書の中で、「庶政一新」(各方面の政治を一新する)の決意を発表しているが、それに対して斎藤は、「申すまでもなく政治は宣言ではなくして事実である」百の宣言ありといえども、一の実行なきところにおいては政治の存在を認めることはできないのであります」要するに日本では、戦前も戦後も、行政改革の実現など内閣の宣伝だけだ、ということになるかもしれない。宣言と決意の大安売りで、どれも至難のものばかり。もちろん聞きたいのはどうやるかということだが、首相は肝心の点をぼかしたままである。当時、内閣も軍部も、又右翼や評論家、新聞雑誌等の論調も、日本に何らかの根本的「改革」が必要であり、また日本の針路を明確化した「国策」の樹立が必要だとする意見を表明していた。そうした中で、斎藤はその必要性を否定し、実際に行われている「革新案」に「理論あり、根底あり、実効性ある」ものを見ず、この種の無責任で過激な言論が、思慮の浅い一部の人々を刺激して、ここかしこに穏やかでない計画を作り出し、兇漢による反乱事件へとつながるのだ、とその危険性を指摘した。それはまさに、武力によって現状を打開しようとする政治の流れを表し、いわゆる国家改造路線へとつながるのである。首相への最後の質問は、国策について。一方で軍備の競争をしていながら、一方で外交政策は成功した、うまくいっているという、これはまったくもって偽りである。あちらが軍縮の拡張すれば我もまた拡張する、我が拡張すればあちらもまた拡張する、こういう勢いを持って進んでいったら末はどうなることか。世界の軍備拡大に歩調を合わせながら、どこに広田首相にいう「自主外交」「積極外交」があるのか、と問いただすと、斎藤は「此れより軍部大臣にお尋ねしてみたいことがあるのです」と急角度に主題曲に突入する。

by mako-oma | 2017-05-26 20:51 | 斎藤隆夫 | Trackback | Comments(0)  

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