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齋藤隆夫にみる真の政治家(3)

「国会議員に必要なのは見識ですよ。代議士が大臣になりたい、幸せになりたいでは国は滅びますよ。」こう言い切る斎藤が、最も嫌ったのは「金のかかる選挙」であり、派閥政治であった。資金活動をしない代わり、但馬各地につくられた立憲青年党の若者たちが、手弁当で日ごろから運動に取り組む。先生を落選させては但馬の恥だという意気込みが、選挙のたびに広がり、他陣営から”斎藤宗”と呼ばれていた。選挙はすべて法定費用内でまかなわれ、普段の活動は年一、二回選挙区に帰り演説会を開くだけだ。
斎藤はまた、地元への利益誘導に厳しい。公共事業をするといって党派の拡張を計るのは、政府や政党のなすことではなく、「全く強盗の仕業であります。」演説会といえば今も変わらぬ地元への利益誘導的内容が多かった中で、彼は自分の政見に熱弁を振い、演説に感動した支持者がすなわち”斎藤宗”となった。斎藤のように政治信念で有権者をつなぎとめられない、その不足分をカネで補うのは当然……これが今の時代である。対立陣営から「地元の利益にならない代議士」と攻撃されても、斎藤票は揺るがなかった。治水や鉄道建設など地元に必要な事業は黙っていてもきちんとやってくれた、と当時の運動員の一人が、その頃をふり返って言う。他にも、斎藤は「己の立脚地も定めずに他人の後を追って走るがごときは,独立人にあらずして一種の奴隷である。」と親分子分が結びつく派閥を嫌った。また、軍事費の突出にも監視を忘れず、財政上の問題はそもそも軍事予算の増加によるもので、増税問題もここからきている、と軍拡に鋭く目を光らせた。 ここで大切なのは、斎藤隆夫は、反軍思想家でもなければ反戦政治家でもないということ。いわば、戦前の”平均的日本人”である。天皇を敬愛し、家族の健康を願い、いつまでも故郷の但馬をなつかしみ。適当に教育パパで、娘の婚期が遅れるのを心配し、宴会用の歌曲を習い、息子たちの学徒出陣の際には、「お国のためになるんだぞ」と日の丸の旗を肩にかけてやっているのである。「あいつは偉くなっても変わらないから偉いやつだ。」とは、斎藤の姉、みつの言葉である。(つづく)

by mako-oma | 2017-05-24 19:32 | 斎藤隆夫 | Trackback | Comments(0)  

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